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Azure MigrateでVMware仮想マシンをAzure Local に移行してみた:#3 移行先アプライアンス導入編

みなさん、こんにちは。ネットワールドでSA(ソリューションアーキテクト)として活動している後藤です。

「Azure MigrateでVMware仮想マシンをAzure Local に移行してみた」ということで、Microsoft Azureのサービスである「Azure Migrate」を使用して、VMware環境の仮想マシンをAzure Local環境に移行しよう! という記事の3回目になります。これまでの記事は以下の通りになります。

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前回は移行元環境であるVMware環境に、移行で使用する仮想アプライアンスを展開しました。

今回は移行先環境であるAzure Local環境に、同様に移行の際に使用する仮想アプライアンスを展開します。

1:最初に注意事項と免責事項

本記事で取り扱っているAzure MigrateベースのVMwareからAzure Localへの移行(Azure Migrate based VMware migration for Azure Local)は、執筆時点(2025/05末)でパブリックプレビューのサービスとなります。

執筆時点の情報になりますので、もしかしたら明日にはサービス仕様が変更されているかもしれません。最新の情報はMicrosoftの公式ドキュメントをご参照ください。

また、本記事に従って作業を行って発生した問題について、弊社は責任を負いかねますので、自己責任でお願いします。

2:移行環境概要

前回も紹介しましたが、移行作業を実施する環境は図1のような環境になります。

図1:概要構成図

3:移行環境構築および移行作業の手順

前回の再掲になりますが、移行環境構築と実際の移行作業は、おおよそ以下のようなステップになります。

 

1. 事前準備と環境整備(#1参照)

2. Azure Migrateのプロジェクト作成(Azureポータル)(#1参照)

3. 「Azure Migrate source appliance」の導入と設定(#2参照)

4. 「Azure Migrate target appliance」の導入と設定(←ここから)

5. 移行対象仮想マシンのレプリケート設定

6. 仮想マシンの移行作業

4:「Azure Migrate target appliance」の導入と設定

本作業を行うことで、図1に示す「Azure Migrate target appliance」がAzure Local上にデプロイされ、Azure Migrateから移行先としてAzure Localが見えるようになります。

作業としては、Azureポータル上の作業、管理用端末での作業、仮想アプライアンス上の作業と、異なる作業場所での作業が必要になります。どこで作業しているかは、項のタイトルで示していきますので、ご確認ください。

4-1:Replicate(レプリカ設定)・Azureポータルからの作業

Azure Migrateの「Server,database and web apps」を選択、プロジェクトのページを表示します。ページを下にスクロールした「Migration tools」を見ると、「Azure Migrate source appliance」導入前には表示されていなかった、VMware環境での検出結果が表示されています(図2)。

図2:Migration Toolsの検出結果

図2では2台の仮想マシンが検出されているようです。「2」がリンクになっているのでクリックします。

検出された移行対象一覧のページに遷移します。こちらのリストに表示されている仮想マシンが、前回デプロイした「Azure Migrate source appliance」によって検出された仮想マシンとなります(図3)。

今回の移行対象である「ESXi-VM01」が仮想マシンとして検出されていることが確認できます。

図3:アプライアンスによって検出された仮想マシン一覧

仮想マシンの移行を行うためには、最初に移行元環境と移行先環境の間で仮想マシンの仮想ディスクのレプリケーションを行う必要があり、そのための設定をここで実施します。

図3の画面にて「Replicate」をクリックすると、仮想ディスクのレプリケーション設定ができるのですが、本環境では、まだ移行先のAzure Local環境がAzure Migrateから認識できていないので、まずはAzure MigrateにAzure Local環境を認識させる必要があります。

図3の画面にて「Replicate」をクリックし、レプリケーション設定に画面が遷移します(図4)。

図4:レプリケーション環境設定

レプリケーション設定では以下のような設定をします。

項目 プルダウンメニューでの選択項目
What do you want to migrate? Server or Vritual machines(VM)
Where do you want to migrate to? Azure Local (formerly Azure Stack HCI)
Virtualization type VMware vSphere
On-premises appliance

前回(#2)の「4-1:Discover(検出設定)・Azureポータル
からの作業」の図4で設定したアプライアンス名を選択

表1:レプリケーション環境設定の設定値

「Where do you want to migrate to?」で「Azure Local (formerly Azure Stack HCI)」を選択した段階で、画面下部に青のインフォメーションマークとともにメッセージが表示されます。

このメッセージには「Azure Localへのレプリケーションをする前に確認すること」が2項目表示されます。1項目目がAzure Migrateの必要なサイトのポート443でアクセスできること、2項目目がターゲットアプライアンスをAzure Local環境にデプロイすることです。

このメッセージの中の、図4で赤枠で囲った「Download and Configure」をクリックします。

そうすると、「ターゲットアプライアンスのデプロイと構成」というウィンドウが展開されますので、「Azure Migrate source appliance」のデプロイ同様、アプライアンス名を入力し、「キーの生成」をクリックします(図5)。

図5:ターゲットアプライアンスのデプロイ画面

しばらく待つと図6のように「プロジェクトキー」が表示されますので、これをコピーしてテキストとして保管します。こちらのプロジェクトキーも、後の工程で「ターゲットアプライアンス」の設定の際に使用します。

図6:移行先プロジェクトキーの作成完了

プロジェクトキーを保存したら、次は「ターゲットアプライアンス」のダウンロードになります。

ダウンロード種別としては、VHD形式の仮想ハードディスクファイルを含むエクスポートイメージ(11.7GB)、インストール用コンポーネントモジュール(693MB)の2つになります。

エクスポートイメージに含まれるVHD形式の仮想ハードディスクにはすでにWindows Server 2022(試用版)とAzure Migrate用のコンポーネントがインストールされていますので、Azure Local上にインポートすることで仮想マシンとしてデプロイ可能です。

インストール用コンポーネントモジュールを使用する場合は、Windows Server 2022がインストールされた仮想マシンが別途必要です。必要な仮想マシンのスペックは、図6にも書いてある通り、8vCPU/16GBメモリ、80GB以上の容量を持つ仮想ディスクとなります。

今回は巨大なエクスポートイメージ(11.7GB)をダウンロードします。

図6の画面で「.VHD」を選択して「インストーラーのダウンロード」ボタンをクリックすると、「AzureMigrateApplianceHCI_v25.24.02.07.zip」というファイルがダウンロードされますので、それをAzure Localにアクセス可能な端末にコピーします。

なお、エクスポートイメージファイルをダウンロードしたらAzureポータル上の作業はいったん終了です。図6の画面は閉じて問題ないです。

4-2:仮想アプライアンスのデプロイ・管理端末からの作業

Azure Localにアクセス可能な管理端末からの作業になります。

Azure Localへの仮想マシンのインポートはWindows Admin CenterもしくはHyper-Vマネージャーから実施します。慣れているツールから実施してください。

本記事では手順そのものは割愛して、ポイントだけ紹介します。

エクスポートイメージファイルをインポートする際、接続する仮想スイッチを選択する必要があります。「Azure Migrate target appliance」はインターネット(Azure Migrateのエンドポイント)とAzure LocalのクラスターIPに接続する必要がありますので、どちらにもアクセス可能なネットワーク(仮想スイッチ)に接続します(図7)。

図7:ターゲットアプライアンスの仮想スイッチ接続先

Azure Localには管理用の仮想スイッチ(NetworkATC的にいえば管理インテントの仮想スイッチ)と仮想マシンを接続する仮想スイッチ(NetworkATC的にいえばコンピュートインテントの仮想スイッチ)、もしくはそれらの統合仮想スイッチがあるかと思います。

本記事のAzure Local環境は完全非集中型インテントとなっているため、図7のように仮想スイッチが2つ存在しています。こういった場合は、通信経路の事も考えると管理用スイッチに接続するのがベターでしょう。

また、インポートした仮想マシンのスペックを確認するとメモリは動的メモリ設定になっており、最大16GBまで拡張可能になっています。vCPUも8個なので、スペック的には特に修正する点はないかと思います(図8)。

図8:ターゲットアプライアンスの仮想マシンスペック

インポートした仮想アプライアンスの電源を投入すれば、管理端末上の作業は完了です。

4-3:仮想アプライアンスの設定・仮想マシン上の作業

電源を導入した仮想マシンにコンソール接続すると、Windows Serverのセットアップ画面が立ち上がっているはずです(図9)。

図9:仮想アプライアンス起動後の画面

ライセンス条項などをよく読み、ライセンス条項に同意できる場合は同意し、通常のWindows Serverのセットアップ作業を行って、Windows Serverにサインインします。

サインイン後、「Azure Migrate source appliance」と同じようにブラウザが自動起動していると思います。設定画面が自動起動する設定になっているので、そちらはそのままにしておき、最初の作業であるIPアドレスの設定を行います。DHCP環境の場合は不要ですが、静的IPアドレスが必要な場合には、IPアドレスの設定を実施します(図10)。

図10:仮想アプライアンスのIPアドレス設定

IPアドレス設定画面を閉じてブラウザに戻ると、「Azure Migrate source appliance」と同じように設定画面には「Terms of use(利用規約)」が表示されますので、内容に問題がなければ「I agree」をクリックします(図11)。

図11:Terms of use画面

ここからの手順も「Azure Migrate source appliance」設定時と非常に似通った手順になります。

まず、Azureへの疎通確認や時刻確認が行われ、問題なければ緑のチェックマークがつきます(図12)。インターネットへの疎通にプロキシが必要な場合はここで設定します。

図12:Azureへの疎通テスト完了

続いてターゲットアプライアンス用のプロジェクトキーを登録します。

Azure Migrateのプロジェクトキーは「4-1:Replicate(レプリカ設定)・Azureポータルからの作業」の図6の作業で取得しています。テキストで保存していると思いますので、それを「Verification of Azure Migrate project key」に貼り付け、「Verify」ボタンをクリックします(図13)。

図13:ターゲットアプライアンス用のプロジェクトキーの入力

プロジェクトキーの検証が成功すると、緑のチェックマークで検証成功が報告されます。続いてアプライアンスの自動更新が自動的に実施されますので、5分から10分ほど(インターネット回線などの環境による)待機します。

本記事の環境ではアップデートがあったようで、適用作業まで自動実行され、図14のようにアップデート完了のメッセージが表示されました。「Refresh」ボタンをクリックして画面を更新し、再表示された画面でこれまでの手順を繰り返します。

図14:アプライアンスの自動更新結果

リフレッシュ後、再度アップデート確認を行い図15のように「過去にアップデート実施済み」と表示され緑のチェックマークが表示されます。これで後続タスクが実施可能となりますので、Azureへアプライアンスからサインインするため「Login」ボタンをクリックします。

図15:自動更新のステータス確認とAzure環境へのサインイン

デバイスコードが表示されますので、「Copy code & Login」ボタンをクリックして、いつものデバイスコードを使用したAzureへのサインインを行います(図16)。

図16:デバイスコードの表示とAzureへのサインイン

サインインが完了すると、サインインしているユーザー名が表示され、アプライアンスのAzureへの登録(レジストレーション)が自動実行されます。完了すると図17のように「レジストレーション成功」が緑のチェックマークとともに表示されます。

図17:アプライアンスのAzureへの登録完了

下にスクロールすると、「Manage Azure Local instance information」という設定が表示されます。これは移行先であるAzure Localの認証情報を設定する項目になります(図18)。

図18:Azure Local認証情報設定

図18の「Add information」をクリックすると、認証設定画面が表示されますので、権限を持っているユーザーを指定します(図19)。

図19:Azure Localの認証情報を入力

「Azure Migrate source appliance」でのAzure Local資格情報入力時同様、「Username」にはユーザー名のみを入力します。

「Save」をクリックして認証情報を保存、元の画面に戻るとAzure Localへのアクセスが試行され、資格情報の検証が行われます。問題がなければ緑のチェックマークがつき、検証完了となります(図20)。

図20:Azure Local認証情報の検証結果の表示

認証情報設定まで問題がなければ、図20の「Configure」をクリックしてターゲットアプライアンスの設定を完了させます。

設定が完了すると、図21のように設定完了のメッセージが表示されます。

図21:ターゲットアプライアンス設定完了

以上でターゲットアプライアンスの設定が完了となりますので、仮想マシンからサインアウトして問題ありません。

5:まとめ

今回は、Azure Migrateの移行先となるAzure Local環境に、移行用アプライアンス「Azure Migrate target appliance」のデプロイと設定を紹介しました。

ターゲットアプライアンスは、Azure Localの認証情報だけですが、ほぼ「Azure Migrate source appliance」の設定と同じで迷うこともなかったと思います。

今回は、前回のように作業中にアプライアンスからAzureへの通信チェックでエラーが発生する事象はおきませんでしたが、似たような事象が起きた場合は前回の「5:「Azure Migrate source appliance」の導入作業中に起こったこと」を参考にしてみてください。

次回は、移行準備である仮想マシンのレプリカ設定、並びに実際の移行を実施してみたいと思います。

書いた人:後藤 諭史(Satoshi GOTO)

ソリューションアーキテクト部所属。

専門はWindows Server Hyper-VやAzure LocalといったMicrosoft仮想化技術。Microsoft SDN(Hyper-V Network Virtualization)などのWindows Server ネットワーク技術も。
Microsoft オンプレ技術以外にも、エンタープライズネットワークとかMicrosoft Azureとか、運用とか。
ネットワークやハードウェアといった物理層に近いところが大好きな、昔ながらのインフラ屋さん。得意技はケーブル整線。

Microsoft MVP for Cloud and Datacenter Management(2012-2026)
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