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【Fortinet】IPSec-VPN IKEv2での証明書多要素認証の注意点

皆さん、こんにちは。
ネットワールドSE  西日本技術部の廣澤です。

 

先日、Fortinetから全機種でのSSL-VPNの廃止が発表されました。
これを受けて、「SSL-VPN」から「IPSec-VPN」への移行をご検討中の方も多いかと思います。
そんな中で以下のようなお悩みはありませんか。

 

  • 「SSL-VPN時代は証明書を使って多要素認証をしていたから、IPSec-VPNも同じ認証で実装したい」
  • 「VPN方式の切替に併せて多要素認証を実装してみたい」

 

本記事では、IPSec-VPN への移行を検討中の皆様に向けて、
証明書ベースの多要素認証に関するTipsをご紹介いたします。

IKEv2で証明書認証が通らない?

以下はFortiClientVPNでIKEv2のIPSec-VPNを設定した画面、
および接続時に使用されるクライアント証明書の情報です。

 

そして、以下はFortiGateに設定された「PKIユーザー(証明書認証の為のユーザー)」と証明書の情報です。

 

このFortiClientVPNFortiGateの構成では、
使用しているクライアント証明書の「発行者(認証局)」が一致していないため、通常であれば認証に失敗するはずです。

 

しかし、実際に内部宛てにPingを送信しながら接続を試みたところ、接続に成功してしまいました。

「eap-cert-auth」に注目

では、なぜ接続に成功してしまったのでしょうか?
その要因は、FortiGateのIPSec-VPN設定においてIKEv2特有の設定項目である「eap-cert-auth」にあります。
そして、この設定は手動による追加設定が必須になっています。

 

以下は今回の検証で使用したIPSecフェーズ1の設定例です。

 

赤枠のコマンドがIKEv2で「ID/パスワード認証+クライアント証明書認証」を
実現するために必要な設定になります。

 

ポイント:

  • 「TEST_Group」ユーザグループを参照して『ID/パスワード認証』
  • 「IPSEC_PKI」ユーザに設定された発行者(認証局)を参照して『クライアント証明書』
  • 上記2つの認証に成功すればVPN接続可能

 

しかしながら、上記を設定しただけでは「発行者が異なる証明書」でも接続が成功してしまいました。
では、証明書ベースの多要素認証を正しく実現するには?
この問題を回避するには、「eap-cert-auth」設定の有効化が必要です。

 

以下の公式ドキュメントにその方法が記載されています。

docs.fortinet.com

 

設定投入後の設定内容は以下の通りです。

 

この設定の注意点は以下の3点です。

 

  • IKEv2を設定した場合にのみ設定が可能であること
  • 「authmethod」を「signature(証明書)」にしても自動で「enable」にならないこと
  • 未設定の状態では「show」コマンドで表示されないこと

 

この設定を有効にした上で、再度Pingを送信しながら接続を試みた結果、
VPN接続に失敗し、内部との接続も行えない状態となりました。

 

これは、クライアント証明書が正しく検証され、多要素認証が正しく動作していることを示しています。

バージョンについて

「ID/パスワード認証 + クライアント証明書認証」の多要素認証をIKEv2で実現するためには
「eap-cert-auth」が必要であることは前述の通りです。
この設定が利用可能になるのは、FortiOS v7.4.2以降となります。

 

従って、v7.4.1以前(v7.2系を含む)をご利用のお客様は、v7.4.2以降(v7.6系を含む)へ
バージョンアップされた上で本設定をご活用ください。

補足情報(デバッグログ)

以下は「eap-cert-auth」が無効な場合と有効な場合の、diag debug app ike -1 の出力結果です。

  • eap-cert-authが無効の場合

  • eap-cert-authが有効の場合

 

クライアント証明書の検証が実行され、不正な証明書の場合は「Authentication failed」となります。
万が一、設定してもうまく動作しない場合には、下記のデバッグコマンドを使って
トラブルシューティングを行ってください。

 

# diag debug enable

# diag debug app ike -1

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

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