株式会社ネットワールドのエンジニアがお届けする技術情報ブログです。
各製品のエキスパートたちが旬なトピックをご紹介します。

Cloudflare Immerse Tokyo 2026 参加レポート ~AIエージェント時代のインターネット~

 

Cloudflareが開催するイベント「Cloudflare Immerse Tokyo 2026」に参加してきました。

今回の講演の1つである「Agentic Internetの幕開け:フロンティアモデルとAIエージェントが創る未来」では、Cloudflareの個別製品や機能だけではなく、AIの普及によってインターネットそのものがどのように変化していくのか、そしてその中でCloudflareがどのような役割を担おうとしているのか、というテーマが紹介されていました。

本記事では、特に印象に残った内容を中心に紹介します。

インターネットの主体が「人間」から「AI」へ

まず紹介されたのが、インターネット上におけるAIトラフィックの急激な増加です。

講演では、AIによるリクエストが前年から約1,700%増加したことや、人間によるリクエストが初めて全体の半数を下回ったことなどが紹介されました。

また、現在のインターネットトラフィックの60%以上がBotによるものであり、その増加要因の一つとして、AIの普及が考えられているとのことです。

これまでは、検索エンジンを使ってWebサイトを探し、人が自分自身で情報を収集していました。

しかし現在は、「人間がWebを検索する」のではなく、「AIが人間に代わってWebを検索し、その結果を人間へ返す」という利用形態が増えつつあります。

インターネットやスマートフォンの普及と比較しても、AIの普及速度は非常に速いという説明も印象に残っています。

検索やショッピングも変わる

AIの普及によって変化するのは、Webへのアクセス方法だけではないとされています。

例えばオンラインショッピングでは、これまでは検索エンジンへキーワードを入力し、検索結果の上位に表示された商品を比較して購入するという流れが一般的でした。

一方、AIを利用する場合は、

「○○用途でおすすめの商品は?」

AIへ質問し、AIが推薦した商品をそのまま購入する、といった行動が増えていく可能性があります。

ここで大きな違いになるのが、AIエージェントは人間のようにバナー広告を見てクリックするわけではないという点です。

つまり、人間が検索結果や広告を見ることを前提としてきた検索・広告ビジネスも変化していくことになります。

これまでの「人を中心としたインターネット」から、「AIも利用主体となるインターネット」へ変わりつつある、というのが今回の講演のメッセージの一つでした。

AIエージェント向けWebに求められる4つの要件

これまでWebサイトは、人間にとって見やすく、操作しやすくなるようHTMLをブラウザで表示し、人間が閲覧/操作することを中心に設計されてきました。

しかしAIエージェントにとって、人間向けに作られたWebページが必ずしも効率のよい形式とは限りません。

AIにとっては、Markdownなど、HTMLに比べて余分な情報が少なく、構造化されたフォーマットのほうが効率よく内容を理解できる場合があります。

一方で、AIが普及したからといって人間によるWebアクセスがなくなるわけでもありません。

そのため今後は、

  • 人間が利用しやすいWeb

  • AIエージェントが利用しやすいWeb

の両方を成立させる必要があります。

講演では、AIエージェントがWebを利用する「Agentic Internet」に求められる要件として、次の4つが紹介されていました。

Readable

AIエージェントが情報を効率的に読み取れること。

人間向けHTMLだけでなく、AIが理解しやすい構造で情報を提供することが重要になります。

Discoverable

AIエージェントが必要な情報やサービスを発見できること。

人間向けの検索エンジンだけではなく、AIが必要な情報を効率よく探せる仕組みが求められます。

Callable

AIエージェントが必要な機能を直接呼び出せること。

人間がWeb画面をクリックして操作するだけではなく、AIがサービスや機能をプログラム的に利用できることが重要になります。

Payable

AIエージェント自身が支払いを行えること。

人間がWeb画面上でクレジットカード情報を入力するような従来の決済だけではなく、AIエージェントが自律的にサービスへ支払いを行える仕組みも必要になります。

個人的には、この「Readable / Discoverable / Callable / Payable」という4つの整理が今回の講演の中でも特に印象に残りました。

これはCloudflare公式ブログでも触れられていた内容です。

blog.cloudflare.com

AIエージェントの実行基盤としてのCloudflare Workers

Web側だけではなく、AIエージェントを動かすコンピュート基盤についても紹介がありました。

講演では、一般的なコンテナ環境は同じアプリケーションを多数水平展開する用途を得意とする一方、AIエージェントでは異なる性質の実行基盤も必要になる、という説明がありました。

AIエージェントは、与えられた仕事に応じて自らコードを書き、そのコードを実行してデータを取得し、さらに次の処理を組み立てるといった動きが多い傾向にあります。つまり、毎回同じアプリケーションを実行するとは限りません。

このような大量の独立した処理を高速に実行するための基盤として紹介されていたのがCloudflare Workersです。

WorkersではV8 Isolatesを利用しており、多数の独立したアプリケーションを軽量に実行できます。

さらにCloudflareでは、軽量なIsolateベースの実行環境だけでなく、コンテナ実行基盤のContainersと、その上で構築されたSandboxも提供しています。Sandboxは隔離されたLinux環境を持ち、ファイルシステムやバックグラウンドプロセスも利用できるため、AIエージェントの処理内容に応じて実行環境を使い分けられる構成となっています。

講演ではCodexなどの名前も利用事例として紹介されており、Workersが単なる「エッジでJavaScriptを動かす環境」から、より広いコンピュートプラットフォームへ発展していることが印象的でした。

 

Cloudflareは2026年4月に、AIエージェント向け基盤である「Agent Cloudの拡張」を発表しています。Dynamic WorkersやSandboxes、Git互換ストレージのArtifacts、長時間・複数ステップの処理を支援するThinkなどが紹介されており、OpenAIのCodexとの協業についても触れられています。

「Botかどうかを判定する」だけでは足りない

AIエージェントが増えることで、Webセキュリティにも変化が求められます。

これまでは「人間かBotか」という分類が一つの重要な判断基準でした。

しかし今後はBotの中にも、

  • 検索用のクローラー

  • AIモデルの学習用クローラー

  • 運営元は分かるものの目的が分からないBot

  • 身元自体が不明なBot

など、さまざまな種類が存在することになります。そのため単純に「BotならBlock」という制御ではなく、

「誰が運営しているのか」
「何を目的としているのか」
「実際にどのような動きをしているのか」

までを区別し、それぞれ異なるActionを適用する必要があります。

Cloudflareでは、身元や振る舞いを確認した「Verified Bots」という考え方に加え、AI関連のBotを Search / Agent / Training といった用途で分類しています。

一度判定して終わりではない「Precursor」

BotやAIエージェントを識別する技術として、Precursorという仕組みも紹介されました。

従来のChallengeでは、アクセスしてきたユーザーに対して一度判定を行い、問題がなければアクセスを許可するという考え方が中心でした。

Precursorでは、JavaScriptを利用してブラウザ上のクライアントサイドシグナルを継続的に取得し、セッション全体を通して挙動を評価します。

人間が操作を開始した後にAIエージェントへ処理を任せる、といった利用形態が増えることを考えると、一度だけの認証ではなく継続的にアクセスの挙動を評価する必要性が高まるのかもしれません。

AIエージェントが自分で支払う「402 Payment Required」

Agentic Internetの「Payable」に関連して興味深かったのが、HTTPステータスコードの「402 Payment Required」です。

AIエージェントが有料のAPIやコンテンツへアクセスした際に、

  1. エージェントがリクエストを送信
  2. サービス側が402を返す

  3. AIエージェントが必要な料金を支払う

  4. 支払いを証明する

  5. コンテンツやAPIを利用する

といった機械同士の決済を実現する構想が紹介されていました。

これまでHTTP 402はあまり利用されてこなかったステータスコードですが、AIエージェントが自律的にサービスを購入する時代になることで、改めて重要になる可能性があります。

CloudflareのAgents SDKでは、HTTP 402を利用した決済方式として x402Machine Payments Protocol(MPP)の両方をサポートしています。x402はオンチェーンのStablecoin決済を中心とし、MPPはStablecoinに加えてStripeによるカード決済など複数の支払い方式に対応しています。

Web検索のインデックスにも変化

検索の仕組みについても、AIの普及による変化が紹介されました。

講演では、「従来の検索エンジン企業は長年Webをクロールしてきたため、非常に大きな検索インデックスを保有しており、AIによる検索が増える中では、この既存インデックスの量そのものがAI企業間の競争力の差になる可能性があります」と説明されていました。

また、従来の検索用クローラーとAI用途のクローラーをWebサイト側から完全に区別することが難しいケースもあります。

こうした課題に対してCloudflareでは、AI企業がWeb上の最新情報をより効率的に発見できるようにする検索インデックス関連の取り組みも進めているとのことでした。

Cloudflareは2026年7月8日、OpenAIとの研究パイロットを発表しています。参加するWebサイトから得られるネットワークシグナル(コンテンツの鮮度、トラフィック品質、実際のページ変更など)を使い、AI検索の発見・インデックスの精度と鮮度を改善できるかを検証する、という内容です。

 

本節の話から外れますが、CloudflareはOpenAI Daybreak Cyber Partner Programのパートナーとしても紹介されています。フロンティアAIモデルをセキュリティ防御業務に活用するためのプログラムで、Cloudflareはテクノロジーパートナーとして参加しています。

 

AI時代の「翻訳者」

Cloudflareは「Help build a better Internet(より良いインターネットの構築を支援する)」をミッションとして掲げています。

その上で講演を通して感じたのは、Cloudflareが単にAI向けの新製品を追加しているのではなく、

「AI時代のインターネットそのものをどう作るか」

という視点で取り組んでいることでした。

今後のインターネットでは、

  • 人間がWebサイトを閲覧

  • AIがWebをサイトを読む

  • AIがサービスを探す

  • AIがサービスを呼び出す

  • AIがコードを書く

  • AIがコードを実行する

  • AIが支払いを行う

といった利用が並行して発生します。

その中でCloudflareは、

  • AIに読みやすいWebにする

  • AIが情報を発見しやすくする

  • AIやBotの身元を識別する

  • 信頼できるAIとそうでないAIを区別する

  • AIがコードを実行する場所を整える

  • AIが安全にサービスを利用・決済できるようにする

といった、人間向けインターネットとAI向けインターネットをつなぐ翻訳者のような立ち位置を目指しているという話をしていました。

AIエージェントの普及によってインターネットの前提そのものが変わろうとしており、「より良いインターネット」の定義もまた変わり始めているのかもしれません。

インターネットの変化を考えるきっかけとして非常に興味深い講演でした。

 


 

▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼
ネットワールドが開催する 年に一度の大イベント
Networld Wiz 2026 】お申込み受付中!!

本ブログでご紹介したメーカーもイベントへ出展します!

セッション & ブース出展情報 随時更新中
  ▼ぜひチェックしてください▼