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フラッシュにとってネットワークは遅すぎる、どうしたら?

Fig163


本記事の原文はNutanix社のGlobal Engineering / R&D TeamでManager Business Critical Appsを務めるMichael Webster氏によるものです。原文を参照したい方はYour Network Is Too Slow For Flash And What To Do About Itをご確認ください。情報は原文の投稿時のままの情報ですので、現時点では投稿時の情報と製品とで差異が出ている場合があります。

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Fig162フラッシュの技術がデータセンタの形を変えつつあることに疑いを持つ方はもうおられないでしょう。ロックバンドのクイーンは30年以上も前にそれを理解していたようですが!フラッシュはハイパフォーマンスアプリケーションの展開のための経済性を変革しましたし、回転するディスクをベースとした従来型のストレージシステムには多くあったパフォーマンス上のボトルネックを取り除きました。実環境のデータでのハイブリッドストレージ(SSD+HDD)のデータの削減率という記事の中で示したとおり、データの削減のためにフラッシュを利用する必要はありません、ですが、データ削減とともにフラッシュストレージを利用すればフラッシュの容量の経済性を改善することが出来ます(ディスクを利用するよりも安く、フラッシュのパフォーマンスを利用することが出来ます)し、電源や空調を削減し、可動パートがないことによる信頼性の改善を同時に得ることが出来ます。みなさんはまだご存じないかもしれませんが、近年のSSDなどのフラッシュデバイスはハードドライブ以上の信頼性を誇っています。物理的な容量という観点からもSSDのキャパシティは期間あたりのでのダイあたりのトランジスタ数の収容量のおかげで、CPUのパフォーマンスが上がっていくのと同じようなスピードで増えていっています。あるベンダーは既に2.5インチのドライブで16TBという物を出荷開始しており、この価格は2.5インチのハードドライブよりも安くなっており、消費電力も低く、冷却コストも低く、スペースもより小さくすることが出来ます。記事の冒頭の画像はインテルのM.2デバイスのものですが、3.5TBものキャパシティをもち、恐ろしいほどの小さなフォームファクターを実現しています。では、ネットワークはこれにどう対処しなければならないのでしょうか?

ファイバーチャネルを利用しているのであれ、イーサーネットを利用しているのであれ、ネットワークはフラッシュの技術、そしてもっと重要なことにはアプリケーションを上手く動かすために大きな役割を担っています。この理由はとてもシンプルです。データベースの管理者にとっては随分前から知られていたことです。データがアプリケーションから遠くはなれてしまうことで、レイテンシが高くなり、スループットが落ちてしまい、それによってパフォーマンスとユーザーからのレスポンスタイムが劣化してしまうということが原因です。これはフラッシュによってより明確に浮かび上がります、特にキャパシティとパフォーマンスの技術がどんどん先へと進み、1本、もしくは数本のデバイスだけでネットワークのパフォーマンスを限界に追いやってしまうことになるからです。こうした理由は幾つかのエンジニアリングシステムがインフィニバンドのネットワークやRDMAを利用するための一つの理由ですが、それでさえ、遅いのです。以下は3つの異なるフラッシュデバイスと現在のイーサネットネットワーク技術のスループットを比較したグラフです。

Fig164

数多く目にする2.5インチのホットプラグ出来る一般的な形のフラッシュデバイスは今日では500MB/sのスループットを実現でき、最大で50K(5万)か、それ以上のIOPSを低遅延で実現することが出来ます。ですから、たったの2本のドライブで10GbEイーサネットワークを飽和させますし、4本あれば16Gb/sのFCネットワークも飽和させてしまいます。幸いなことに、我々はサーバごとに複数のNICポートもしくはHBAを通常利用しています。しかし、これはストレージ装置が数十から数百のドライブもしくは、サーバ内、もしくはストレージシェルフで12~24のドライブを利用するようになると役には立ちません。もちろん、今日一般的なフラッシュの技術であったとしても、それをネットワークに接続するのであれば、そこがパフォーマンスのボトルネックとなり、全パフォーマンスに近い値をなし得ることはほとんど不可能です。

さて、今日のNVMeへと目を移しましょう。これは次世代のフラッシュテクノロジーであり、2016年の終わりまでには一層普及し、2017年にはメインストリームとなっていく技術です。それぞれのデバイスは40GbEのNICを飽和させるのに充分なスループットとIOPSになります。もし、システム内に2つのデバイスがあるとしても、デュアルポートの40GbEのNICを飽和させてしまいます。これがEMCのDSSDのようなNVMeベースのストレージシステムが従来型のネットワークでストレージとサーバを接続しない主な理由で、そのかわりにDSSDは多くの第3世代 PCIe接続を多く束ねて接続を実施しています。彼らは既にネットワークが大きなボトルネックで、NVMeベースのフラッシュが提供するようなパフォーマンス能力を届けるためにはおそすぎるということを認識しているのです。それぞれのNVMeデバイス自体は今日我々が目にする一般的なほとんどのエンタープライズストレージのフラッシュよりも6倍から8倍は高速です。今日どれだけのお客様が40GbEのNICや32Gb/sのFC HBAをデータセンタ内のサーバに搭載しているでしょうか?

SSDは速いです。NVMeをベースにしたSSDはもっと速いです、ですが、インテルとマイクロンが共同で開発している3D Xpointはブッたまげるほど速いのです。3D Xpointは2015年にアナウンスされ、エンタープライズのプラットフォームへの導入は2018年か2019年と期待されています。これは今日一般的なエンタープライズのシステムで利用されているSSDの1000倍高速です。3D Xpointが提供するパフォーマンスによって、マザーボード、プロセッサ技術、メモリバス、そしてそれ以外のすべてが強力にブーストされることになるでしょう。デバイス単独でもマルチポートの400GbEネットワーク(400GbEは100GbEの次に予定されています)を飽和させるのに充分です。これを今すぐにネットワークへと接続したとしても、ネットワークを1年は待たなくてはなりません。3D Xpointは150ナノ秒以下のレイテンシを提供すると予想されており、これは今日の40GbE、100GbEのスイッチポートよりも速いのです。Gen3/Gen4のPCIeを利用したとしてもこれほどのパフォーマンスへの対応には充分に速いとはいえません。インメモリデータベースの影響を考えなんて、とんでもない!これはDRAMのスピードで動作しているのです。

Fig165

上のCrehan Research Inc.のデータが示すように、10GbEと40GbEのポートの利用は増え続けており、100GbEのポートのコストも下がりつつ有ります。しかし、100GbEはまだ幅広く受け入れられているとは言い難く、今時点では40GbEのサーバもまだという状況です。Crehan Researchの2015年のレポートによると100GbEは2017年から広く利用され始めると予測しています。しかし、これはスイッチングやバックボーンでの話であり、サーバーでの利用ではありません。NVMeがメインストリームとなり、3D Xpointを数年先に控えても、それぞれのサーバ間のネットワーク接続はこの1000倍の隔たりを短い時間では吸収しきれません。本来でいえばデュアルポートのTbEの接続を備える必要があるのです。

ですから、こうした証拠からもしフラッシュをネットワークに接続するとしたら、パフォーマンスへ影響を与えるボトルネックと投資への有効性への制限をある程度は抱えてしまうことになるのです。それと同時にお持ちのフラッシュが叩き出す可能性があるスループットに近いレベルでのデータの保護についても保証がほしいと考えるでしょう。どうすれば両立できるのでしょうか? 高いパフォーマンス、低いレイテンシ、アプリケーションに可能な限り近いデータ、それでいてデータ保護を保証できる方法は?

簡単な答えはSSDをローカルのRAIDカードに接続する、ということになるでしょう。これは2.5インチのSSDであればうまくいくでしょう(もちろん、パフォーマンスの観点から複数のRAIDカードをサーバに搭載しなくてはなりません)、しかし、これはNVMeや3D Xpointでは上手く行きません。複数のローカルのRAIDコントローラーを全てのサーバに入れる、ということは個別に管理しなくてはならない数百、数千のストレージキャパシティのサイロを生み出します。我々は長い時間をかけてこの管理のオーバーヘッドを集中管理することで回避できるアーキテクチャを作り上げてきました。この新しいテクノロジーを活用すべきで、後戻りすべきではありません。

現実的な回答は2つです、一つ目は仮想化、そして二つ目は本来の意味で分散されているシステムアーキテクチャへの投資で、そのこころはデータローカリティという概念です。データローカリティを持つアーキテクチャはデータ保護のために分散しながら、一方でデータがアプリケーションにとってローカルにあるということを保証します。仮想化が必要な理由は膨大なまでの高いパフォーマンスを持つストレージがあり、単独のアプリケーションではそれを現実的に使いこなせないからです。仮想化を利用することで、コンピューティングとストレージのキャパシティとパフォーマンスを充分に利用することが出来るのです。幸福なことに、インテルはプロセッサの能力を毎年向上させ続けており、コンピューティングのためのコアを、ハイパフォーマンスストレージのためにも利用することが出来るようになっているのです(プロプライエタリコンポーネントは必要ありません)。

データローカリティの概念は大きく成長し、拡張する必要がありながら、データ保護と高いパフォーマンスが必要となる多くのウェブスケールアプリケーションで利用されています。データローカリティの概念で、膨大なネットワーク負荷を減らすことが出来、それがボトルネックに成長することを防ぐことが出来て、新しいタイプのフラッシュテクノロジーの将来を保証することが出来るのです。データはアプリケーションからはローカルのPCIeバスを通じてメモリに読み込まれ、書き込み、もしくは変更だけがそのデータを保護するためにネットワークを経由します。データローカリティをベースとしたアーキテクチャが適切に実装されていれば、拡張はリニアに行え、想定通りの一貫したパフォーマンスが得られるのです。これによって多くの推測での作業やトラブルシューティング、ビジネスにおけるリスクを削減できます。これはアーキテクチャが環境へのシステムの追加や退役などの矢継ぎ早に変更される要件に適応する能力をより多く保持しているからです。

データローカリティをもつ分散アーキテクチャを利用して、カスタムメイドのアプリケーションや新しいウェブスケールのビッグデータアプリケーション(Hadoopやそれに準じるもの)へも対応が可能です。ですが、もしこうしたタイプのアーキテクチャからメリットを受けることが出来ない開発者がいない場合、どうしたメリットが有るのでしょうか?新しいストレージの技術に適応可能なアーキテクチャでかつ、変化の起こりつつあるデータセンタの将来を保証できるものは?その答えはSANではありません。ここで述べてきたとおり、フラッシュをネットワークの終端に接続するとしたら、その近く以外ではなにも実現ができないのです。現在存在する唯一のソリューションはハイパーコンバージドシステムで、サーバとストレージは単一のユニットに融合しており、それは分散アーキテクチャをなしているのです。

すべてのハイパーコンバージドシステムはデータローカリティの概念をその中に実装しているわけではありません。ですから、注意深くベンダーを選定してください。それぞれのベンダーをご自身の要件とビジネスのニーズにおいて評価し、どのベンダーが大きなアーキテクチャの変革無く、将来に渡って投資を保護してくれるのかをお考えください。幾つかのベンダーはアンチローカリティをプロモーションし、お客様へ単に多くのネットワークポートを購入しながらオールフラッシュを利用することを推奨しています。残念なことに、ネットワークカードはフラッシュのテクノロジーに対応ができません(400GbEでも遅いのです)。ですから、パフォーマンスは最高のものが保証されませんし、そのアーキテクチャではどんどんと変化していくフラッシュのテクノロジーをシームレスに採用していくことも出来ないのです。

さらに、一度フラッシュに投資を行い、それをアプリケーションの近くへと配置すれば、CPUの利用率も上昇させることが出来るということも付け加えさせてください。特定のユースケースにおいてこれは劇的です。これはストレージがもはやボトルネックではなくなったということが原因です。アプリケーションはIOの完了を待つ必要がなくなりますので、ユーザーへのレスポンスが良くなりますし、バッチジョブはより早く完了しますし、より短い時間で多くのトランザクションからなるプロセスを実行できます。結果として、CPUのアイドルの時間がより少なくなるのです。究極的にはより短い時間でより多くの有益なしことをこなすことが出来ます。ですから、フラッシュを利用して急にCPUの利用率が80%を超えたとしてもビックリしないでください。これは期待通りです。投資がすべて良い方向へ使われた結果に他なりません。それとも、もっと沢山の機材を購入されますか?

終わりに

この話とそれ以外の話をビールを飲みながらNutanixの開発エンジニアであるTony Allen氏としているビデオを以下から見ることが出来ます。以下のビデオはエンジニアとビールを飲もう!シリーズの1つです。(訳注:字幕は入れておりません)

データローカリティは唯一の将来が保証されたデータセンタアーキテクチャであり、かつ、データセンタを継続的に破壊し続けるフラッシュテクノロジーの進化を取り込むことが出来るものです。Nutanix(私はそこで働いています)はデータローカリティをアーキテクチャのコア部分として本当に初期のリリースから取り入れています。この主な理由はアーキテクチャは拡張し続けられなくてはならないものであり、過去5年間に導入された異なる世代の環境にその下のアーキテクチャの変更無く受け入れられるものでなくてはならないからです。もちろん、起こりうる変化に対応して将来保証されていなくてはなりません。我々はお客様に様々なプラットフォームを組み合わせて使っていただくことが出来るようになっています。それでいてデータをアプリケーションにとってのローカルにし、データとアプリケーションの間のパスをできり短くし、アプリケーションのレイテンシを低くすることが出来るのです。

記事担当者: マーケティング本部 三好哲生 (@Networld_NTNX

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さて、前回に引き続きオールフラッシュの内容ですが、その内容は衝撃ではありませんか? 今後はフラッシュデバイスがどんどん早くなり、SSDが安くなっていく・・・ここまでは様々なストレージベンダーもが口をそろえて同じ事を言いますが、フラッシュデバイスはもっと早くなり・・・SANでは対応ができなくなる(もしくは普及もしていないような高価な高速なNICを買い続ける?)ということです。

もちろん、普及しなければNIC値段は下がりませんのでジリ貧ですが、「データローカリティ」を備えたHCIであればこのネットワークを超えるスピードを持つフラッシュを効率的に(もちろん、Writeが極端に多いアプリケーションがあれば話は別ですが、いろいろな仮想マシンで負荷の平均化が出来るでしょう)データセンター内に取り込むことが出来るのです。

アプリケーションとデータを近くする以外にはネットワークのボトルネックを通さなければいけませんので、正にこの話はPernixDataが描いていたストーリーですし、それを買収したNutanixがどこを見ているのかが分かりやすい記事だと思いました。2017年、いよいよPernixDataのテクノロジーが入ったNutanixが楽しみです!