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THE AI参加レポート #3 ~サイバーエージェント様における「人をAIが接客する世界」とは?~

イベントのレポートは全体で3つのレポートになっています。
基調講演レポート「 AI時代における人間の価値 」https://blogs.networld.co.jp/main/2018/02/post-015f.html


株式会社電通 講演 「AIは「顧客体験」をどう変えるか」https://blogs.networld.co.jp/main/2018/02/the-ai-2ai-067d.html


株式会社サイバーエージェント 講演 「人をAIが接客する世界」https://blogs.networld.co.jp/main/2018/02/the-ai-3ai-44dc.html

 「人をAIが接客する世界」

最後に紹介させていただくのはサイバーエージェント様の直近の研究内容である「人をAIが接客する世界」というタイトルのセッションになります。

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残念ながら今サイバーエージェント様がこうやってAIを接客に使っているという話ではなく、サイバーエージェント様のAI研究組織であるAI Labでは今こんな研究をしていますという内容になります。

 まずAI Labでは様々な大学と産学連携の取り組みをしていて、登壇された馬場様も大阪大学の石黒研究室に招聘研究員として参画しているとのことでした。そこで研究されている接客として「カスタマーサポートを想定した共感エージェントによる感情制御の実験」という大学の研究室ぽいタイトルで興味深いお話をしていただきました。

 

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その前に1枚だけ、サイバーエージェント様の前にNTTドコモ様のセッションのスライドを紹介したいと思います。チャットボットはこれからどのように発展していくのか?という内容ですが、今回のTHE AIでチャットボットについて触れていたセッションですべて共通していたメッセージがあります。「2018年現在、完全に自然言語だけで解決する汎用性の高いチャットボットはまだ精度が低い。チャットボットを実用化するためには、最初のやりとりのいくつかを選択式にするなどしたルール型で会話内容を絞った上で自然言語にするのがベストプラクティス」的なことは様々なセッションで言われていたことです。

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これに対して、馬場様の研究室では入力を選択式にするわけではなく別のアプローチで接客を改善するアプローチを紹介していました。チャットボットが顧客ではなくオペレータの発言のキーワードに反応することで、顧客に自由な入力をさせつつ、自然な会話を成り立たせようという試みです。これは通常2者間で利用されるチャットボットを、チャットボット、オペレータ、顧客の3者間のチャットにして第3者としてチャットボットを登場させることにより、カスタマーサポート業務の問い合わせからクローズまでの時間の短縮と、顧客満足度の向上を図るという試みです。社会心理学では有名なハイダーのバランス理論(均衡理論)を元にしてチャットボットを会話に介入させているそうです。ちょっと悪い言い方をすると顧客とサポートの間に「サポートの息がかかったボット」が介在して、このボットが暗躍して顧客満足度を上げつつも、問い合わせが早くクローズされるように仕向けるという高度な動きをするそうです。これは出会い系とかで使われたら絶対ヤバいやつじゃないかと思うのですが…。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%90%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%B9%E7%90%86%E8%AB%96

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タイトルにもあった共感というところでは既に利用者に高い評価を得ていると、もう少しオペレータの評価が上がるようにしないとトータルの顧客満足度の向上にならないため、実用化には少し時間がかかるとのことでした。しかし心理学とAIの組み合わせが生み出す価値というのは、ものすごくこれから重要になってくるのではないかと、考えさせられた内容でした。

 

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そして最後は主催であるレッジの中村様と、スプツニ子!様のパネルディスカッションがクロージングセッションでありました。本イベントのテーマである「未来ではなく、今のAIを話そう」に沿った、日本の今の「AIの使いどころ」、「チャットボット」、「AI研究」が1日で体感できるカンファレンスとして楽しませていただきました。主催社及び関係者の皆様、ありがとうございました。

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