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2018/02/16

THE AI参加レポート #1 ~基調講演にみる「AI時代における人間の価値」とは?~

 本日は弊社のIBMパートナー様のWatson・リングでAIを中心にコンサルタントを提供しているLedgeさん主催のTHE AIに参加してきました。AIというと謎の半導体ベンダーNvidia社の年次イベントであるGTC(GPU Technology Conference)が有名ですが、「未来ではなく、今のAIを話そう」というメッセージに惹かれて参加してみた次第です。


イベントのレポートは全体で3つのレポートになっています。
基調講演レポート「 AI時代における人間の価値 」https://blogs.networld.co.jp/main/2018/02/post-015f.html


株式会社電通 講演 「AIは「顧客体験」をどう変えるか」https://blogs.networld.co.jp/main/2018/02/the-ai-2ai-067d.html


株式会社サイバーエージェント 講演 「人をAIが接客する世界」https://blogs.networld.co.jp/main/2018/02/the-ai-3ai-44dc.html

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基調講演:「AI時代における人間の価値」 by 為末 大

 オープニングの基調講演は元陸上選手で400メートルハードルの日本記録保持者である為末大さんによる「AI時代における人間の価値」と題したセッションでした。「為末さんってAIわかるのかーすげー」と思ったら開口一番でAIのことはよくわかりません宣言!その代わり人間の脳のことはよく知っているよということで「自動化」「集中」「イメージ」「内容」「欲求」の5要素についてお話いただきました。 職業病なのかAIについての知識はあってもベースとなる人間の脳についてあまり考えたことがなく非常に面白く話を聞くことができました。

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「自動化」

人間の脳が行う自動化は、人が走るという1つの動作をするときは、例えば右腕を強く上げて次に左腕を上げる、並行して左足を前に出して、強く地面を蹴る、と同時に右足を前に出して…みたいな複雑かつ並行的に行われる個々のタスクを脳が1つの走るというアクションになるように自動化しているのです。的な話でした。こんなときITの世界ではやりたいことがわかっていればスクリプトのようにコンピュータがわかる言語で指示を出してあげれば何回でも同じアクションを繰り返し実現することができます。「何回でも全く同じアクションを繰り返すことができる」これはIT(AI)が持つ人間と比較して優れていることの1つということができます。

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 人間はこういった一連のアクションを自動化するには練習(学習)が必要です。野球選手はプロ野球の一流選手であっても、日々の練習でバッティングフォームを維持するようなものです。しかも人間には困ったものがあります。人間の脳の場合、練習や(学習)でどうしても抜けない癖のようなものがついたりしますが、こういった都合の悪いことだけを修正する為末さんの言葉ではアンラーニングが一番難しいという話、これも「ゼロベースから再学習ができる」IT(AI)が持つ人間の脳と比較して優れていることの1つと言えるでしょう。

 ここまでIT(AI)が優れている点ばかりが目につきますが、元々コンピュータができたときから「自動化」がITに向いているのはわかっていたことで仕方がないといえます。

 

 「集中」

 でも人間の脳にも優れたところがいっぱいあります。2つ目の特徴である「集中」についてみてみましょう。これは人間にしかできない特技ですね。スポーツでは「ゾーン」とか、私も仕事で資料作成や原稿を書くときに「神様が下りてくる」とか言っています。為末さんの言葉では「集中とは連鎖の停止」とありますが、人間の脳は余計なタスクの連鎖が停止することでやりたい、やらなければいけないタスクに集中することができるという意味合いになります。

 確かにAIでは色々学習した状態になっていると当然すべての学習結果をベースに結果をだすため、何かに集中したければ集中したい内容だけに特化した学習データを準備する必要があります。ところが人間の脳の場合、集中しなければいけないときだけ、一時的に何かに特化した動きを作り出すことができるのです。好きなときに集中状態を作り出すことは、超一流のスポーツ選手とかはできるのかもしれませんが、容易なことではできませんが…。これは

AIにはない、人間の脳の優れたところということができます。

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「イメージ」

 次に為末さんが紹介したのは「イメージ」です。人間の脳はAIと同じように大量の学習データをもっている場合、新しく見たもの、経験したものを即座に学習することができます。全くの素人はアスリートの走りを見ても即座にまねることはできませんが、一流のアスリートは他のアスリートの走りを見ただけで色々学習することができるという話がありました。よく高校生のアスリートが練習として、社会人・大学生のアスリートにチューブで繋いで牽引されることで一歩先のスピードとその時の体の動きを体感すると、多くを学ぶことができるというのも同じような効果でしょう。但し実際に体感したことから学ぶのは比較的容易ですが、見ただけでわかるというのは難しいことです。為末さんはよいアスリートは走りそのものを抽象化して考えているからだとしています。

 確かにITでも、知見のある製品は一度製品説明を聞いただけで自分の言葉で喋ることができますが、知見のない製品は製品説明を聞いただけでは自分の言葉で喋ることはできず、一度評価で実際触ってみたりすることでようやく自分の言葉で喋れるようになりますね。

 ただしIT/AIと違って、人間の脳は意図と実際の動きはずれがあるという話がありました。例えばこれ以上早く走るには?と考えたときに、もっと足を前に出して強く地面を蹴るという意図が生まれたとします。でも実際には足をもっと前に出すという意図を実現するためには、腕をもっと強く振るという動きが正解だったりするわけです。こういった意図と実際の動きのずれというのは、十分なデータがある場合、人間の脳よりIT/AIの方が得意と言えるかもしれません。

 

「内省」「欲求」

でも人間の脳にはIT/AIに負けないことがいっぱいあります。為末さんの言葉では「内省」「欲求」いう表現をされていました。

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とここまで、為末さんの人間の脳の「自動化」「集中」「イメージ」「内省」「欲求」について、私なりのAIとの違いも交えて紹介してきました。

 

まとめ

為末さんのセッションのまとめとして人間の脳の最大の特徴は可塑性と忘却であると。可塑性というのは一度外力で変形すると元に戻らない、学習の定着のことを言っていて、忘却というのは何かを忘れるというよりは私は上書きができることを言っていると理解しています。為末さんの話では、昔は携帯電話なんてなかったのに、それが携帯電話になり、今ではパソコンと同じようなことができるスマホを多くの人が様々な使い方を作り出していることを例にしていました。「自動化」で触れたとおり人間の脳ではアンラーニングは難しいのですが、それを上書きすることで常に進化を遂げているのではないでしょうか。 

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 最後に「進化論」の著者であるチャールズ・ダーウィンの「最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き残るのでもなく、環境に適応した種が生き残る」という言葉で締められました。何にでもいえることかもしれませんが、凄いいい言葉ですよね。私の業界でいうと「最も性能がいいベンダーが売れるではなく、最も多機能なベンダーが売れるでもなく、もっとも市場に適応したベンダーが売れる」となります。いかがでしょうか。

 執筆時にチャールズ・ダーウィンについて調べていたらもうひとついい言葉をみつけたので紹介します。「有利な個々の変異を保存し、不利な変異を絶滅すること。 これが自然淘汰である。まさに為末さんがいった可塑性が「有利な個々の変異を保存」、忘却が「不利な変異を絶滅すること」なのではないでしょうか。我々の人間の脳には生まれ持った変異に対して自然淘汰することができるのです。

 本記事では為末さんの話に沿って、人間の脳とIT/AIのそれぞれのいいところを紹介してきました。それぞれのいいところを最大限に引き出して、これから人間に寄り添うAIとしてより豊かな社会の実現がみえた基調講演をレポートさせていただきました。

次回は電通さんのセッションついてのレポートを紹介させていただきます。