HPE教育サービスの中川明美です。
3回目は、年末に実施したLab環境アップグレードの奮闘記をお届けします!
トラブルシューティングを行い、計画を変更し、アップグレード作業を終えることができました。そして学ぶことも多い作業でした(笑)
トラブルシューティング時の参考になれば幸いです!
アップグレード前の環境
アップグレード後のゴールとする環境
今回のアップグレード手順
当初の計画は次の通りです。実際はvCenter Server Applianceは新規デプロイとなり、ESXiホストはGUIを使用したアップグレードになりました。
仮想マシンの移行はスムーズに
ProLiant DL360 G5 (Intel Xeon CPU E5405:EVCモードはPenryn) からProLiant DL360p Gen8 (Intel Xeon CPU E5-2640:EVCモードはSandy Bridge) へ仮想マシンを移行します。
異なる世代のCPUが搭載されたESXiホスト間でvMotionsが不可になるのは、仮想マシンが移行先ホストにないCPUの機能を使用している場合に限られます。G5のホストはクラスタ配下にありませんでしたが、G5上の仮想マシンはGen8へvMotionすることができました。
もしGen8で稼働している仮想マシンをG5に移行するなら、Gen8上の仮想マシンをパワーオフ後、クラスタでEVC (Enhanced vMotion Compatibility) モードをPenrynに設定する必要があります。移行元と移行先のESXiホストをクラスタ配下に置き、仮想マシンをvMotionします。
EVCについては次のKBが参考になります。
https://kb.vmware.com/s/article/2011037
vCenter Server Applianceのアップデート断念
rootのパスワードがわからず、アップグレードすることができませんでした。自身が構築した環境ではないため、このようなこともおきますね。パラメーターのアウトプットは必須ですね!
今回はホスト名やIPアドレスを変更する予定でしたから、新規でデプロイすることにしました。
Update Managerを使用したESXiホストのアップグレード失敗
メンテナンスモードに切り替えられず、アップグレードまで進めることができませんでした。
メンテナンスモードに切り替えられなかったのは?
手動でメンテナンスモードに切り替え、どの仮想マシンに問題があるかを確認しました。2つの仮想NICを構成する仮想マシンが移行できません。移行元と移行先で同じネットワークラベルを設定していますが、移行できませんでした。そのため移行中のみ、ネットワークアダプター 2の「接続中」のチェックを外し、強制的に移行しました。
ESXiホストのアップグレードはGUIを使用して
結果、ESXiホストを手動でメンテナンスモードに切り替え、GUIを使用してアップグレードを行いました。
Update Managerは、アップグレード後のコンプライアンスチェックに使用しました (苦笑)
参考
◆分散仮想スイッチのアップグレード
vSphere Web Clientで、Distributed Switch を右クリックし、「アップグレード > Distributed Switch のアップグレード 」を選択します。次にアップグレードするバージョンを選択します。
詳細は、次のドキュメントを参照ください。
◆VMware Toolsのアップグレード
下図の「VMware Toolの更新」からアップグレードすることができます。また仮想マシンの数が多い場合はUpgrade Managerを使用してアップグレードすると効率的です。
VMware Toolsのアップグレード時の再起動可否は、次のKBを参照ください。
https://kb.vmware.com/s/article/2093703
◆仮想ハードウェアのアップグレード
vSphere 6.5の仮想ハードウェアバージョンは「13」です。仮想ハードウェアのアップグレードは仮想マシンをパワーオフする必要があります。
仮想ハードウェアバージョンのアップグレード方法は、次のKBを参照ください。
https://kb.vmware.com/s/article/1037375
◆VMFSのアップグレード
VMFS5をVMFS6へアップグレードする方法はありません。新たにVMFS6のデータストアを作成し、VMFS5のデータストア内の仮想マシンを移行します。
移行の詳細は次のKBを参照ください。
https://kb.vmware.com/s/article/2149355
今回の作業で起きたトラブル
◆vSphere Web Client 6.5 U1を使用した仮想アプライアンスのデプロイができない
VCSA 6.5.0-4944578 to 6.5.0-5973321のvCenter Server ApplianceでOVFをデプロイすると、次のエラーが表示されます。VMware vCenter Server 6.5 Update 1dで解決されています。
年末はVMware社のダウンロードサイトがメンテナンス中だったため、VMware Host Clientを使用してデプロイしました。
このエラーの詳細は次のKBを参照ください。
https://kb.vmware.com/s/article/2151085
◆Update Managerのスキャン操作がエラーで終わる
次のリリースノートを確認しても、スキャンのエラー原因を見つけることができませんでした。
https://docs.vmware.com/jp/VMware-vSphere/6.5/rn/vsphere-update-manager-651-release-notes.html
◆仮想マシンが移行されない
VMkernelポートの設定は正しく行われているのに、vMotionできません。通信が行われているのかを、パフォーマンスチャートを使用して、vMotion用の物理NICの送受信を確認しました。結果送受信パケットはゼロです。仮想スイッチの設定を確認したら、vMotion用に追加した2つ目の物理NICが未使用に割り当てられていました。vMotionできないはずです。
※物理NICの送受信はリアルタイム統計でのみ表示されます。
複数のトラブルを乗り越え、アップグレード作業を終えることができました。トラブルシューティングは知識の総動員ですね!
4月から受講生用の物理サーバーを、ProLiant DL360 Gen10へリプレースします。その際に今回のトラブルの原因であろうネットワーク構成も見直します。その後、ゴールにしていたvRealize Operations Managerをインストールできるとよいなぁと思っています。こちらは、OVAをデプロイ後、初期設定画面がループします。管理サーバーがあるセグメントだけに起こる事象です(苦笑)
アップグレードは、様々な方法が提供されています。環境に応じたアップグレード方法を選択いただき、またこのブログの内容が参考になれば幸いです。
「徹底攻略VCP6.5-DCV教科書 VMware vSphere 6.5対応」が1/19に出版されました。受験の際にはぜひご活用ください!!
日本ヒューレット・パッカード株式会社 教育サービス 中川明美
記事担当者: マーケティング本部 三好哲生 (@miyo4i)
先週に引き続き骨盤矯正ブログ、Upgrade編、これで完結です。Update Managerは優れたツールですが、以前は日本語環境での対応が甘いとか、そういうことも言われていました。今回はそれとは関係のないところで引っかかってしまったようですが、rootのパスワード、ネットワークのラベルなど、ある意味検証環境あるあるかもしれません。ただ言えることはUpdate Managerでうまく行かなかった時、リカバリできるだけの知識が必要ということです。
ねーさんはさっさと問題を発見して、その回避策を繰り出していますが、本番環境をアップグレードするというのはなかなか簡単なことではありません。最初の記事にも有りましたが、充分に内容を検討/推敲し、万全の準備をしてから望んで下さい。また、こうしたニーズに答えるのがコンバージドインフラ、ハイパーコンバージドインフラのメーカーによる事前検証です。
導入コストにばかり目を向けてDIYだらけになってしまうと後から運用で躓いてしまう・・・そうしたリスクも有りますので、是非実証済みインフラをご検討いただけますと幸いです。