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Microsoft Azure VMware Solution 最新情報 from Microsoft Ignite

Microsoft社の技術者向けの年次イベントであるIgniteが9/22-9/24でオンラインで開催されました。

そこでAzure上のベアメタルサーバにVMware社のSDDCソフトウェアスタックが導入済みでMicrosoft社のマネージドサービスとして提供されるAzure VMware Solution(AVS)のリリースが発表されました。詳細については以下のURLでご視聴ください。

https://myignite.microsoft.com/sessions/adcaabd7-9038-45d0-8e41-cf5fa3be5f1e?source=global-search

 

■Azure VMware Solution(AVS)とは何者なのか?

 Azure VMware Solution(AVS)はMicrosoft社のAzureサービスとして提供されます。そのサービス利用料には、先述のAzure上のベアメタルサーバだけでなく、VMware社のvSphereやNSX,vSANといったソフトウェア群すべてのサポートまで含まれた形で提供されます。

 VMware Cloud on AWSがAWS上のベアメタルサーバにVMware社のソフトウェア群を導入してVMware社のサービスとして販売されているのとは異なり、すべてMicrosoft社が運用・管理し販売されます

 

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 従来から同様のサービスがAzure VMware Solution(AVS)s by Cloud Simpleとして提供されていましたが、Google社によるCloud Simple社の買収に伴い、完全なMicrosoftソリューションとして新しくリリースされたのがAzure VMware Solution(AVS)になります。

Azureが提供するIaaSサービスと違い、オンプレミスで利用していた仮想マシンをIPすら変更することなくそのままAzureのデータセンター上にあるvSphere基盤に移行することが可能です。それだけでなく従量課金や容易なホストの増減が可能といったパブリッククラウドの特徴も持っています。

それらの特徴を生かして、既存のデータセンターの置き換えや拡張の用途、災害対策サイトとしての用途、アプリケーションのモダナイゼーションのためのパブリッククラウドとの連携、将来的な移行を見越してパブリッククラウドと同一データセンターにvSphere基盤を配置したいといった用途での検討・利用が多くあります。

 

 

発表時点では北米・ヨーロッパ・オーストラリアで利用可能になっていますが、現在東日本リージョンでの提供も準備が進められています。

既に日本国内でも多くのお客様にご利用いただいているVMware Cloud on AWSやAzure VMware Solution(AVS)、IBM Cloudだけでなく、Oracle社やGoogle社なども同様の自社クラウドサービスとしてvSphere基盤を提供するサービスを開始しています。他社パブリッククラウドで提供されるvSphere基盤と比較した場合のAzure VMware Solution(AVS)の強みとは、Azureのクラウドサービスとの連携、Azureハイブリッド特典を利用することでWindowsやSQLのライセンス費用の削減Windows7やWindows Server 2008のセキュリティ延長サポートの無償提供などがあります。

 

 

■Azure VMware Solution(AVS)はどんなコンポーネントで構成されるの?

本セクションはhttps://www.youtube.com/watch?v=k0UaEqgTPdoで公開されている発表内容をベースに執筆されています。

 Azure VMware Solution(AVS)は実際にどのような構成になっているのか見ていきたいと思います。Azure VMware Solution(AVS) はAzureデータセンターで稼働するvSphere基盤の利点を最大限に生かせるような「Azureの純正サービスとして提供される」「Azureサービスなのでハイブリッド特典やレガシーOSのESUの無償提供などのAzure特典が適用される」「オンプレミスの仮想マシンを何も変えずに移行可能」といった特徴を持っています。

 

 

 Azure VMware Solution(AVS)のサービスは、Azureデータセンターで稼働するベアメタルサーバにvSphere + vSAN + NSXが導入済みで提供されます。ESXiのインストール、vCenterサーバの構築、NSX環境の構築などの導入作業は一切不要です。

 またVMware Cloud on AWSなどで提供されているHCXサービスもAzure VMware Solution(AVS)にも含まれています。Azure VMware Solution(AVS)はAzureのデータセンターで稼働しているため、VPNまたはExpressRouteのゲートウェイ経由でAzureのその他のサービスとAzureのバックボーンのネットワーク経由で通信することが可能です。

 残念ながらオンプレミスのように稼働するワークロードに応じたサーバハードウェアを選択することはできず、2020年9月現在はAV36と呼ばれるハードウェアモデル1つしか提供されていないのは残念なところです。

 

 

 Azure VMware Solution(AVS)が構成するネットワークはお客様のAzureサブスクリプション上に展開されますが、ネットワークなどのAzureリソースを直接変更することはできません。AzureポータルのAzure VMware Solution(AVS)の管理画面からしか操作することはできません。vSphereやNSXはオンプレミス同様で直接vCenterやNSX Managerのコンソールから管理を行うことができます。このときフルマネージドサービスとして提供されている都合上、一部操作を行うことができない制限付き管理者としてアクセスすることになる点は注意が必要です。

ネットワークについては次のセクションで詳細を紹介していきます。

 

 

 

■Azure VMware Solution(AVS)はオンプレミス、既存Azureリソースとどうやって接続するの?

本セクションはhttps://www.youtube.com/watch?v=6_LYsYicacsで公開されている発表内容をベースに執筆されています。

 

 本セクションではAzure VMware Solution(AVS)とオンプレミスと既存Azureリソースとのネットワーク接続について紹介します。Azure VMware Solution(AVS)とオンプレミスとの接続にはVPNまたはExpressRouteを利用することができますが、HCXを使った仮想マシンの移行を利用する際は、ExpressRouteが必須となります。またAzure VMware Solution(AVS)と既存Azure リソースの接続の際にもExpressRoute間をGlobal Reachと呼ばれる機能を使ってAzureのバックボーン回線を使うことで高速かつ低遅延な接続を実現しています。

  

 

 Azure VMware Solution(AVS)は、利用者が所有するAzure サブスクリプション内に展開されます。下図にあるDedicated Microsoft Endpoint Edge(D-MSEE)およびAzure VMware Solution(AVS)の仮想ネットワークはすべてMicrosoft Managedのリソースとなり、利用者が直接変更することはできません。利用者が持つMSEEとGlobal Reachで接続し、そのMSEE経由でオンプレミス環境への通信が行われます。

 

 

 

これはオンプレミスとの接続がVPN Gateway経由でも同様です。

そしてAzure VMware Solution(AVS)ではNSX-Tを使ったネットワーク仮想化が提供されています。Tier-1ルータを追加で展開し、ロードバランサやDHCP機能を利用することもできますし、分散ファイアウォールを使ってマイクロセグメンテーションを利用することができます。

 

 

もちろんAzureのネイティブサービスとの連携もGlobal Reachの機能を利用することができるので、Azureのバックボーン経由でAzure App GatewayからAzure VMware Solution(AVS)上の仮想マシンに負荷分散するといったことも可能です。

 

■Azure VMware Solution(AVS)上のバックアップはどうしたらいいの?

本セクションはhttps://www.youtube.com/watch?v=rhTgVqR4ppsで公開されている発表内容をベースに執筆されています。

 最後にご紹介するセッションはAzure VMware Solution(AVS)のデータ保護に関する内容です。実際にVMware Cloud on AWSでもデータ保護をどうしたらいいのか?という相談は弊社でも多くご相談頂いています。

 まずMicrosoft社から提供されるバックアップソリューションは、Microsoft Azure Backup Server(MABS)と連携するものになります。

 

 

 MABSではオンプレミスのvSphere環境のバックアップで一般的なエージェントレスでvSphere上の仮想マシンのイメージバックアップを取得することができます。このときMABSはAzure VMware Solution(AVS)上の仮想マシンとして構成することもできますが、Azure VMware Solution(AVS)の障害時を考えるとAzure Virtual Machineサービス上に仮想マシンとして構成することが推奨されています。この場合、Azure VMware Solution(AVS)が障害になった場合でも異なるAzure VMware Solution(AVS)を展開してそこにバックアップしたデータから復旧するといったことが可能になります。

 

 

 またAzure VMware Solution(AVS)で提供されるHCXサービスは移行だけではなく、災害対策(DR)用途でも利用することができます。後述するVMware社のSite Recovery Managerのように細かな仮想マシンの起動順序の制御や、スクリプトの実行を行うことはできませんが、簡単に仮想マシン単位のフェールオーバーを実現することができます。

 仮想マシンの数も多く仮想マシン単位のフェールオーバーでは復旧手順が複雑になりすぎるような構成では、Site Recovery Managerを使って「オンプレミス」-「Azure VMware Solution(AVS)」でDR構成を実現することができます。

 

 

「オンプレミス」-「Azure VMware Solution(AVS)」だけでなく、「Azure VMware Solution(AVS)」-「Azure VMware Solution(AVS)」でもDRを構成することができます。Azure VMware Solution(AVS)が将来的に西日本リージョンでも展開可能になると東日本と西日本でDRを構成することもできるようになります。

またMicrosoft社、VMware社以外のベンダーのエコシステムとして、バックアップとしてCommvault社、Veritas社、Veeam社、災害対策としてZerto社、JetStream社が現在サポートを提供しています。

 

■ネットワールドからのお知らせ

さてここまでで、今回のIgniteでリリースされた新しくなったAzure VMware Solution(AVS)のご紹介をさせていただきました。弊社ネットワールドでは、Microsoft社、VMware社の長年の1次店としての実績をベースに、VMC on AWSの経験も豊富なエンジニアがパートナー様、お客様のご支援を致します。

Azure VMware Solution(AVS)にご興味がありましたら、お気軽にms-solution@networld.co.jpまでお問合せください。

ソリューションアーキテクト: 工藤真臣

仮想化関連製品以外でも、プリセールスから、何でも相談室、障害対応まで何でもこなす雑食系アーキテクト。
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