M7iインスタンスは何がすごいの?
現在ラスベガスで開催されているAWS社の年次イベントであるre:Invent 2023でVMware Cloud on AWSの新しいインスタンスm7i.metalが発表されました。
外部ストレージに依存する前提でCPUに全振りしたベアメタルインスタンスがベースに採用されています。現在提供されている3つのインスタンスとスペックを比較するとこうなります。
i3.metal | i3en.metal | i4i.metal | m7i.metal | |
CPU | 36 | 48 | 64 | 48 |
Memory | 512 | 768 | 1024 | 384 |
Storage | 10.37TiB | 45.84TiB | 20.46TiB | なし |
*11/29 10:00 CPUが96コアと記載していましたが物理コアは48だったので修正しました
気になる金額はFY2024Q4(2023/11-2024/1)正式リリースとなるまでわかりませんが、こうしてみる限りi3.metalより安いくらいででてくるのではないでしょうか。
外部ストレージ依存って管理用仮想マシンはどうするの??
i3.metal,i3en.metal,i4i.metalを利用するVMware Cloud on AWSのSDDCは展開された直後から管理用の仮想マシンが展開される「vsanDatastore」と利用者が作成する仮想マシンが展開される「WorkloadDatastore」がvSANデータストアとして構成されます。
既にリリースされている情報を見る限り、「vsanDatastore」相当のデータストアが「managementDatastore」として100TBのNFSストレージがマウントされて展開されるようです。恐らくVMware Cloud Flex Storageが自動的にデータストアとして構成されているものと思われます。Amazon FSx for NetApp ONTAPは?!と思われる方もいるかもしれませんが、先日リリースされたVPCピアリングでの接続もVTGWも利用者側のVPCの準備も必要になるため「managementDatastore」として利用することはできないと思われます。
A Closer Look at the M7i Instance on VMware Cloud on AWS | VMware
利用者が作成する仮想マシンが展開される「WorkloadDatastore」相当の外部データストアとしてはVMware Cloud Flex Storage とAmazon FSx for NetApp ONTAP いずれかのストレージサービスを利用することができます。
興味のある方は既にデモ動画も公開されているので、こちらをご覧ください。
結局のところ何がうれしいの???
VMware社のドキュメントによると以下のようなワークロードに向いているとあります。
CPU負荷の高いワークロード
- 画像処理
- ビデオエンコーディング
- ゲームサーバー
AI/MLワークロード
- コード生成
- 自然言語処理
- 古典的機械学習
限られたリソースしか必要としないワークロード
- ウェブサーバーとアプリケーションサーバー
- マイクロサービス/管理サービス
- セカンダリデータストア/データベースアプリケーション
ランサムウェアとディザスタリカバリ
- 最新のランサムウェア・リカバリ
- 次世代DR
- コンプライアンスとリスク管理
一般的なエンタープライズ用途で、特にホスト数の増減もしないような環境ではCPUとメモリのバランスからi4i.metalで構成した方がいいのではないでしょうか?これはランサムウェアやディザスターリカバリで有事の際にだけ展開するような場合には同じことがいえると思います。
逆にVMware Cloud Disaster RecoveryやNetApp BlueXP Disaster Recoveryを使ったランサムウェアやディザスターリカバリー対策ではpilot lightと呼ばれる、最小構成(VMware Cloud on AWSでは2ホスト構成)での構成が一般的な構成とされています。これはRTOの最小化ということもありますが、vSphere環境が展開・設定されて初めて復旧するための仮想マシンのネットワークのマッピングやセキュリティを担保することができるからです。
このpilot lightの構成を維持するには2ノードを常時稼働させる必要があるため、少しでも安価であるにこしたことはありません。有事のときだけ2ホストから必要な台数までの増設してメインサイトの復旧までの短期間の間だけ稼働するだけなので、この期間はi4i.metalで展開した方が安価かもしれませんがトータルの費用として考えると通常時のコストが安価になるm7i.metalを採用した方が安くなる。「最新のランサムウェア・リカバリ」「次世代DR」などと想定ワークロードにあるのはこのpilot lightの構成があってのことになると思われます。正式リリース時に価格が発表されないと正確なことは言えませんが、ランサムウェアとディザスタリカバリ対策で無条件でm7i.metalが安くなるわけではないと思いますのでご注意ください。
m7i.metalを2ホストというのも決して安くはない金額になるかと思いますが、昨今増え続けるランサムウェアの被害に備える意味での災害対策サイトの需要は増えてきています。従来のように本番サイトと同等のvSphere環境を準備しなくてはいけなかったことと比較すると大幅な費用の削減を実現することができます。「以前災害対策サイトの検討をしたけど費用が高額で見送った」「ランサムウェアの被害が増えていて不安だけどできるだけ費用は抑えたい」、そんな用途ではこの新しいM7iインスタンスを効果的に利用することができるのではないでしょうか?正式リリースと東京や大阪リージョンでの提供開始が待ち遠しいです。
ソリューションアーキテクト: 工藤真臣
仮想化関連製品以外でも、プリセールスから、何でも相談室、障害対応まで何でもこなす雑食系アーキテクト。VCAP-DCA+DCD+CID vExpert 2012-2022