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各製品のエキスパートたちが旬なトピックをご紹介します。

Microsoft Ignite 2025速報:Day3

みなさん、こんにちは。ネットワールドでSA(ソリューションアーキテクト)として活動している後藤です。

Microsoft Ignite 2025が現地時間11/18 9:00から始まっています!

現地から、速報という形で情報や雰囲気をお伝えさせていただければと思います。

3日目(11/20)のサンフランシスコは朝から雨です。

写真1:雨のサンフランシスコ

セッションのアイスブレイクで、「シアトルは雨が多いけど、サンフランシスコでここまで雨が続くのは珍しい」といっていましたが、今週は曇りがちでたまに小雨な天気が続いていましたけれども、今日は傘をさすくらいな雨量です。ただ、昼には止みました。

天気はあいにくな感じですが、3日目はまさに本命なAzure Local Dayです。

1:Day3・Maintain regulatory compliance with the Microsoft Sovereign Cloud(BRK167)

Sovereign Cloud(ソブリンクラウド)とは何ぞや? ですが、無理やり訳すと「主権者のクラウド」になりますでしょうか。なんのこっちゃですよね。

パブリッククラウドとの比較で、データの置き場所やデータ管理の主権を確保して、だれにデータを侵されることなく主体的に管理する、独立したクラウドとして利用する、というようなイメージかと思います。デジタル主権、なんて言い方もしますよね。

何のことはない、オンプレの隔離基盤じゃん、という話ではなく、クラウドのメリットも生かしつつ、デジタル主権はユーザー側に、というのが昨今のソブリンクラウドの考え方ではないかと筆者は考えています。

このソブリンクラウドに対するMicrosoftの取り組みが紹介されたのが本セッションですが、ソブリンクラウドが必要になった歴史的背景がこちら。

写真2:歴史的背景

マイルストーンにマークがついていますが、2017年のGDPR(EUの一般データ保護規則)のコミット、2018年の完全適用あたりからデジタル主権(あるいはデータ主権)を特にEU域内でビジネスをする場合は順守する必要が発生し、ソブリンクラウドが必要になってきた、という解釈でしょうか(識者の方、間違いがあったらご指摘ください)。

デジタル主権のピラーはデータ主権やシステム主権など複数ありますが、ここでは運用主権(運用管理)とデータ主権(データ管理)の2つのピラーを取り上げて、自営による適切な管理と運用、そしてプライバシー保護、これを達成するためのデータへの不正アクセスの防止が必須である、と定義しています。

写真3:デジタル主権

パブリッククラウドにおいてもGDPRが適用されていないクラウドは、EU内で使用できなくなる(もちろんEU外でもGDPRに似た規則は世界中にあるので、それらに準拠していないと同様ですが)ので、Microsoftも対応してきた、という流れですね。

写真4:Microsoftのソブリンクラウド

Microsoftのソブリンクラウドの取り組みがこちらですが、Microsoftのパブリッククラウドでは、データをEU域外で保管しないなどの取り組みが行われています。

GDPR自体がEU域内の話なので、ヨーロッパが強調されているのは仕方ないと思いますが、世界中に似たような話(日本でも個人情報保護法とか、政府調達のセキュリティ基準を満たしたクラウドをリスト化したISMAPとかありますよね)はあり、GDPRを準拠していれば、他の基準も満たしている可能性は高いとも言えますね。

そしてソブリンプライベートクラウドとしてあげられている基盤がAzure Localです。

Azure Local上でExchangeやSharePoint、Skypeといったコラボレーションアプリを展開可能なMicrosoft 365 LocalがGAし、AI基盤を動かすための必要なGPUは、すでにAzure Local 23H2でサポート済みになっています。

写真5:Azure Localでのソブリンプライベートクラウドの機能

写真5は、Azure Localのソブリンプライベートクラウドとしての機能を示していますが、このあたりの機能の紹介は、項番4の「What’s new in Azure Local」あたりで詳しく解説します。

Microsoft 365 Localは今のところ日本で提供されるかどうかはわかっていませんが、ディスコネクテッドモデルとの合わせ技で、高い機密性を要求されるお客様で必要とされるかもしれませんね。

このセッションでは、ソブリンプライベートクラウドが必要になるシナリオとしてヘルスケアを挙げていました。

写真6:ヘルスケア業界でのシナリオ

医療情報という究極の個人情報を抱えるヘルスケア業界は、ソブリンクラウドを求めている業界の一つですね。

デジタル主権を意識してクラウドを利用する際には、どのような機能が求められ、その機能をMicrosoftではどう実現しているのかを理解する上では、非常に参考になるセッションではないでしょうか。

2:Day3・Modernizing Legacy Virtualization with Azure & Cloud Connected(THR737)

1日目と2日目にあったWindows Server 2025 Hyper-VとAzure Arcのセッションのダイジェスト版のようなセッションでした。

1日目のWAC v-Modeのセッションにはなかったスライドがこちらで、通常のWACとv-Modeの使い分けがわかりやすく例示されています。

写真7:WACとv-Modeの使い分け

v-Modeは仮想化基盤管理に特化しているので、エージェントあり/DBありで1000ホスト程度まで管理できるのに対して、エージェントレスな普通のWACは50ノード程度が推奨とのこと。仮想化ホストと仮想マシンのトータルで50ノードだとすると、ちょっと物足りないですね。こうなるとv-Modeですね。

v-Modeのロードマップが共有されましたが、写真を撮り損ねたようで途中のスライドになってますが、Public Preview2が2026年のQ1でQ2にGAとのこと。

写真8:v-Modeのロードマップ

v-Modeは絶賛feedback受付中とのことなので、ぜひテストしてfeedbackしてください!

余談ですが、VMware環境からHyper-V環境へ移行する「VM Conversion」は2026年Q1でGA予定とのこと。こちらもGAが待ち遠しいですね。

「VM Conversion」に関しては、こちらの記事でご確認ください。

blogs.networld.co.jp

また、Hyper-V ReplicaによるDRもv-Modeで設定・管理が可能なので、お手軽にDRを始めたいならHyper-Vがお勧めかもしれませんね。

写真9:Hyper-V ReplicaによるDR

今回のMicrosoft Igniteでは、結構Windows Serverがフューチャーされており、Windows Serverの復権が予感されるなにかがありました。これからも継続してウォッチが必要ですね。

3:Day3・Unlock the power of Azure Local(THRSP943)

今回のMicrosoft Igniteの聞きたいセッションの大本命といっても過言ではない、Azure Local関連セッションの2つ目です。

シアターセッションなので、次のブレイクアウトセッションの前哨戦のような感じで聞いていました。

前哨戦かと思いきや、いきなりディスコネクテッドモードがぶち込まれました。びっくり。

写真10:AzureとAzure Localのサービス面での比較

写真10は、AzureとAzure Localのコネクテッドモードとディスクコネクテッドモードの機能差をまとめた図になりますが、ディスコネクテッドモードですと、やはりできることが限定されます。Azureが使えないので仕方ないですね。

ここにM365 Localのアイコンが載ってきているのは、仕事早いなー、という感じですね。ただ、M365 LocalとSkypeの二つのアイコンがあるのは何故……?

ディスコネクテッドモードは2026年のH1にGA予定とのこと。

写真11:ディスコネクテッドモードのロードマップ

最後にHPEさんの対応機器のスライドが表示されたのですが、

写真12:HPEさんのサーバー対応状況

新しいIntelチップを積んだサーバー(Gen12)2026年のH1に出荷開始予定とのこと。

また、今回のMicrosoft Igniteで発表されたAzure LocalのSAN対応ですが、HPEさんのストレージではAlletra MP B10000が対応するそうです。

SAN対応も目が離せないですね。

4:Day3・What’s new in Azure Local(BRK147)

そしてド本命のセッションです。

結構広い会場で空席がほぼないので、皆さん注目のセッションだったのでしょう。

冒頭はAdaptive Cloudの話。Azure ArcもAdaptive Cloudの文脈でよく語られますね。

写真13:Adaptive Cloud

Azure Arcでつないで、どこでもAzureを実現しましょう、まさにAzure Anyware。

そんななかで、オンプレミスにおいてAzureから管理する、クラウドコネクテッドなインフラソリューションがAzure Localです、という感じで投影されたスライドがこちら。

写真14:Azure Localのスライド

ちょっと見たとき二度見したんですが、お気づきいただけるでしょうか。

拡大した図がこちら。

写真15:スライドから抜き出したもの

……Azure Linux?? そもそもAzure Stack HCI OSではなく、Windows Server?? という首が折れるくらいかしげたくなるようなスライドですが、「Azure Linux*」になっているので写真をくまなく探してみるとありました。右下に小さく書いてありました。

写真16:スライドから抜き出した注釈

セッションではこのAzure Linuxに言及していなかったと記憶していますが、もう一度録画を見直そうかと思っています。Azure Linux……。

セッションは続き、今日の朝1のセッションでも見たソブリンクラウド。Azure Localはソブリンプレイベートクラウドにも使えます。

写真17:ソブリンクラウド

ここからAzure Localのデモムービーが流れたのですが、その中で興味深かったものがこちら。

写真18:デモムービー中のVideo Indexer

後で紹介しますが、Azure Local上で動くVideo Indexerで危険物を見つける、みたいな感じです。この荷物はどのくらい放置されてたのでしょう? 忘れもの? それとも? こういったものをAIで検知してトラッキングする技術ですね。すごい。

こういったものも含め、Azure Localは進化しています、というところで、怒涛の新機能の発表。

まず、ちょいちょい出ていたディスコネクテッドモード。現在は限定公開中ですが、来年GA予定。

写真19:ディスコネクテッドモード

写真5の左上の「Support for higher scale Points」という100台クラスのノードまで拡張可能なAzure LocalクラスターのPreviewが発表されました。

写真20:Multi-rack deployments

ネットワーク機器とストレージを1つのラックに収め、他はコンピュートラックをいくつも作って、という構成です。ここで「あれ? ストレージ……?」と思った皆さんは正解です。

SANのExternal storageサポートのPreviewも併せて発表されました。

写真21:SANサポート

当初5社以上、といわれていたベンダーが発表となり、Pure Storage、NetApp、Dell、Lenovo、HPE、日立のストレージがサポートされる模様。前のセッションでHPEさんがAlletraのサポートを発表していました。

当初はファイバーチャネルのみ、iSCSIは将来サポートとのこと。

続いて朝1のセッションでもあったM365 Local。

写真22:M365 Local

コネクテッドモードでもディスコネクテッドモードでも、どちらでも動きます。

ソブリンクラウドの文脈であればディスコネクテッドモードで動かす感じですかね。Exchange Server、SharePoint Server、Skype for Business Serverが動きます。

他のセッションでもちらちら出ていたNVIDIAのRTX Pro 6000 Blackwell Server Editionのサポート。こちらはComming soonです。対応ハードウェアは各社から来年出荷予定。

写真23:NVIDIA RTX Pro 6000 Blackwall

商標、ちゃんと正しく書こうよ……(独り言)。

BlackwellでAIの話に振られてしまったので、AI系でのPreview開始の話が続きます。

まずEdge RAGです。

写真24:Edge RAG

Arc-Enable k8s、Arc-Enable AKSですかね、こちらの上で動きます。

続いてVision AI。ちょっと前にデモムービーの中に出てきたVideo Indexerです。

写真25:Video AI

次はGA済みの機能の発表で、Azure Migrate、SDN機能を使ったNetwork Security Group(NSG)ときました。これはスライド省略します。

機能的には最後に2つPreviewの発表。

まずは

写真26:Local Identity without Active Directory

Local Identity without Active Directory、いわゆるところのワークグループクラスターです。Key Vaultを使います。

エッジなどのドメインコントローラーのないネットワークでの利用が期待できますね。

次はRack-aware clusters。

写真27:Rack-aware clusters

いわゆるラック冗長の仕組みですね。異なるラックに置いたAzure Localクラスター間でストレージを同期して、ラック障害でも問題なく動作するようになるものです。ラック=ゾーンとするならばAzureのゾーン冗長に近いかもしれません。

まだまだ機能がされるようで、ソブリンプライベートクラウドを実現するための新規機能がCommig soon!だそうです。

写真28:ソブリンプライベートクラウド

 

Site to Site DRが非常に興味深いですね。Hyper-V Replicaの機能を使うんでしょうか? この辺りは引き続きウォッチします。

非常に発表の内容の多いAzure Localセッションでしたが、発表が多すぎて、具体的な内容に乏しかったのが非常に残念かな、という感じです。実際動いている画面とか見たかったなぁ、SANサポートとか。

とはいえ、非常に強力な機能群が来年にかけて登場します。

引き続きウォッチして、わかり次第本ブログにアップしますね。

5:最後に

Azure Local、やっぱり大きな発表がありました。

SANサポートについては、セッション中「顧客の声を聴いて実現しました」というようなことを言っていたので、やはりS2Dだけではなく、既存の資産を有効活用できないと仮想化基盤の移行は難しいのだろうな、というふうに感じました。

とはいえ、Windows Serverの復権も期待できるところなので、Windows Server Hyper-VとAzure Localのすみ分けを考えていかないとですね。

それと謎のAzure Linuxの文字ですね。こちらは録画を見直して、何かわかればブログにアップします。

そんなこんなでフルセッションは3日目である今日で終了し、4日目は午前中だけの開催となります。4日目は日本マイクロソフト様のJapanセッションに参加予定です。

あと半日、頑張ります!

書いた人:後藤 諭史(Satoshi GOTO)

ソリューションアーキテクト部所属。

専門はWindows Server Hyper-VやAzure LocalといったMicrosoft仮想化技術。Microsoft SDN(Hyper-V Network Virtualization)などのWindows Server ネットワーク技術も。
Microsoft オンプレ技術以外にも、エンタープライズネットワークとかMicrosoft Azureとか、運用とか。
ネットワークやハードウェアといった物理層に近いところが大好きな、昔ながらのインフラ屋さん。得意技はケーブル整線。

Microsoft MVP for Cloud and Datacenter Management(2012-2026)
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