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Azure VMware SolutionとAzure NetApp Filesの組み合わせってどうなのよ?

この記事はvExperts Advent Calendar 2022の10日目の記事です。

Azure VMware Solutionってなに?

 Azure VMware SolutionはAzureのデータセンターにベアメタルサーバ上にCloud Foundation(vSphere+vSAN+NSX)と移行ツールであるHCXが提供される、vSphereベースの仮想基盤がマネージドサービスとして提供されるクラウドサービスです。

 AzureにはAzure Virtual MachineのIaaSサービスが提供されているのになぜパブリッククラウドに移行してまでvSphere基盤が必要なのでしょうか?

  • IaaSへの移行時には基本的に移行元対象のIPを変更する必要がある
  • そのまま移行したいだけなのに、運用が変わってしまう
  • 一部レガシーOSの動作がvSphere上ではサポートされる

 こうした様々な理由や、そもそも移行可否の検討を実施して必要があれば回避策を考えなければならず、単純に仮想基盤のデータセンター移行として考えたときに移行コストがかかるといったこともあります。

Azure VMware Solutionのストレージのどこが不満なの??何が悪かったの??

 Azure VMware SolutionではNVMeフラッシュをベースとした高速なvSANデータストアが標準で提供されています。というか今まで追加で外部データストアを利用することはできませんでした。Azure VMware Solutionでは2022年6月にAzure NetApp Filesのデータストア利用のプレビューが開始されました。そして2022年11月にはプレビューから正式提供を開始しています。同様に2022年9月にVMware Cloud on AWSでもAWS FSx for NetApp ONTAPのデータストア利用が正式提供を開始しています。

 VMwareさんのどんな心境の変化かわかりませんが、急に外部データストア利用が進んだのには何か理由があるのでしょうか?恐らく1番大きな理由としてストレージ偏重型の仮想マシンリソースを移行する場合のクラウドコスト削減が挙げられます。執筆時点ではAzure VMware Solutionで利用される物理サーバは東日本リージョン、西日本リージョンいずれもAV36と呼ばれるサーバのタイプしか選ぶことはできません。そのためストレージ容量は1ホストあたり15.36TBに固定され、オンプレミスでvSANを構成するときのようにストレージ容量だけを増加するといったことができません。

利用可能なホストのスペック(執筆時点で日本で提供されているのはAV36のみ)

 

 1ホストあたり15.36TBの容量に固定されてしまうと、ストレージ容量が大きなワークロードを移行したときに、CPUやメモリは不足していないのにも関わらずストレージ容量のためだけにホストの台数を必要がでてきます。このとき外部データストアがサポートされていればストレージだけを追加することができるためコストを削減することができます。

 今回紹介するAzure VMware SolutionとAzure NetApp Filesの組み合わせはNetApp社の提供するオンラインサイジングツールを利用することで、vSANデータストアだけで構成した時とNetAppストレージサービスを利用した場合のコストを容易に比較することが可能です。ちなみにAzure上ではCloud Volume ONTAPを使ってNetAppストレージを構成することもできますが、Azure VMware Solutionでのデータストア利用をサポートするのはAzure NetApp Filesだけなので、本記事ではAzure NetApp Filesだけを取り上げています。

bluexp.netapp.com

 例えば典型的な例になりますが、2CPU、8GBメモリ、500GBのストレージを持つ仮想マシンを200台の仮想環境を移行する場合、AV36のvSANストレージで構成した場合の違いは以下のようになります。

TCO Estimatorの結果
  • vSANのみで構成した場合AV36が14台必要
  • Azure NetApp Filesで構成した場合AV36が3台Azure NetApp Filesが74TB必要

 この場合Azure NetApp Filesで構成した場合、vSANのみで構成した場合と比較すると45%クラウドコストを削減することができます。これは純粋なクラウドコストだけですので、ホスト単位で必要となるOS・ミドルウェアライセンスを含めるとさらにコストを削減することができます。

 クラウドコストを削減できることは分かりましたが、実際Azure NetApp Filesを利用したときに、ストレージ性能はどの程度なのかAzure NetApp FilesとAzure VMware Solutionの構成とあわせてみていきましょう。

Azure VMware SolutionとAzure NetApp Filesはどうなの?

 Azure VMware SolutionとAzure NetApp Filesを利用する場合の構成についてみてみましょう。Azure VMware Solutionのネットワーク構成は若干複雑ですが、ここで解説を割愛します。興味のある方は以下の資料がAzure VMware Solutionのネットワーク接続について詳細に書かれています。

Azure VMware Solution Logical Design - Deployment and ConnectivityAzure VMware Solution Logical Design - Deployment and Connectivity

Azure NetApp Filesの存在するvNetからExpress Route Gatewayを介してAzure VMware Solutionのネットワークに接続されます。

Azure VMware SolutionとAzure NetApp Filesの接続

 Azure NetApp Filesのデータストア利用する場合には、ExpressRoute Gatewayによりスループットと遅延が、Azure NetApp Filesの容量+性能レベルで性能がきまります。

 Azure NetApp Filesは性能レベルによる上限ではなく、性能レベルはあくまでも容量あたりの性能値になります。そのため必要なiops/スループットを満たす性能レベルの選定が適切なコストでAzure NetApp Filesを利用するポイントになります。前半で紹介したTCO Estimatorで3つの性能レベルの結果が一覧として表示されるのもそれが理由と考えられます。

 またExpressRoute Gatewayのサイジングに悩む方は多いですが、Ultra Performance利用時だけ設定可能なFastPath機能はAzure NetApp Filesのデータストアアクセスの遅延に大きく影響しますので検証時以外はExpressRoute GatewayはUltra Performance + FastPathで構成することを推奨します。弊社の検証した限りでは4kのI/Oサイズのアクセス時で1-2ms程度の遅延が解消され性能が大きく向上することを確認しています。少しでもデータストアアクセス時に経由するゲートウェイを少なくすることで、性能が変わってきますのでご注意ください。

learn.microsoft.com

Azure VMware SolutionとAzure NetApp Filesを利用する場合の性能指標

 そしてデータストアの性能ですが、Azure NetApp Filesのボリュームあたり10万iops前後の性能がでることを確認しています。弊社の検証した限りではこれ以上は容量を増やしても向上しないため、10万iops以上の性能が必要な場合ボリュームを複数個構成して、複数データストアで運用することを推奨します。

結局どうなの?

 今回の記事ではAzure VMware SolutionとAzure NetApp Filesのデータストア利用について紹介させていただきました。すべてのAzure VMware Solutionの構成で必要になるわけではありませんが、ストレージ容量が大きな仮想基盤を移行する場合には大きくコストを削減することができます。Azure VMware Solutionの利用範囲を広げることができるソリューションとして是非ご検討ください。

 そしてAzure VMware SolutionとAzure NetApp Filesのデータストア利用時の構成時の注意事項は以下の3つです。

  1.  Azure VMware SolutionとAzure NetApp Filesは同一AZに配置すること
  2.  Azure VMware SolutionとAzure NetApp Files間のExpressRoute GatewayはUltraPerformanceでFastPathを有効化すること
  3.  ストレージ性能を最大にするには、複数ボリューム・複数データストア構成をとること

これらに気を付けて利用するだけで、オンプレミスの仮想基盤同様に外部データストアをAzure VMware Solutionで利用することができるようになります。また記事内では検証したベンチマークの結果は記載することができませんでしたが、2023/1/13にセミナーを開催して実際の検証結果やNetApp社のエキスパートに様々な疑問を聞きまくるイベントを予定しています。ご興味のある方は是非セミナーにもご参加ください。

form.networld.co.jp

 

 

ソリューションアーキテクト: 工藤真臣

仮想化関連製品以外でも、プリセールスから、何でも相談室、障害対応まで何でもこなす雑食系アーキテクト。
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