前回、NetBackupを使用したクラウド(Amazon S3)へのバックアップ方法をご紹介させていただきました。この方法も良いのですが、いくつか課題もあります。
課題①:NetBackupはAmazonやGoogleのクラウドには対応しているが、Microsoft Azure等の他のクラウドにはバックアップできない。
課題②:NetBackupからクラウドへのバックアップではバックアップデータの重複排除ができないため、クラウドストレージの使用量を削減できない。
課題③:NetBackupがアクセラレーター機能で永久増分バックアップができるのは、ファイル・VMware・NDMP(NetAppのみ)だけで、SQL ServerやOracle、Exchange等のアプリケーションやHyper-Vの仮想環境などのバックアップではアクセラレーター機能が使えないので、クラウドへのバックアップ時間を短縮できない。
課題④:バックアップはNetBackupのアクセラレーター機能の永久増分により転送量を少なくできても、リストアは対象データが丸ごと転送されるので復旧に時間がかかる。
上記の課題に悩んでいる方、安心してください!解決できますよ!
では、どうやって解決するのかと言うと、クラウドストレージゲートウェイ製品を使用します。
クラウドストレージゲートウェイは、オンプレミスのバックアップサーバとクラウドストレージを仲介する役割を持つアプライアンス(物理or仮想)です。オンプレミスのネットワーク上に配置して、バックアップサーバからは、NAS(Network Attached Storage)やVTL(Virtual Tape Library)の様に見えます。バックアップソフトはオンプレミスのNASやVTLに対して、従来のバックアップと変わらない方法でクラウドストレージゲートウェイにバックアップするだけで、後はクラウドストレージゲートウェイが裏でクラウドストレージにデータを転送してくれます。
クラウドストレージゲートウェイとしては、AmazonのAWS Storage Gatewayが有名ですが、S3やGlacierなどのAmazonのクラウドストレージにしかバックアップできませんし、重複排除ができませんので、上記の課題を解決することはできません。
そこで、全ての課題を解決するのが、EMC社のCloudArrayやNetApp社のAltaVaultといったサードパーティのクラウドストレージゲートウェイ製品です。この2つのストレージゲートウェイ製品は、バックアップサーバからはCIFSやNFSを提供するNASのように見えます。各製品の説明は各製品担当の方のブログにお任せするとして、ここではバックアップソフトの観点でサードパーティのクラウドストレージゲートウェイ製品がどのように前述のバックアップの課題を解決するのか見ていきましょう。
課題①:NetBackupはAmazonやGoogleのクラウドには対応しているが、Microsoft Azure等の他のクラウドにはバックアップできない。
解決①:サードパーティのクラウドストレージゲートウェイ製品はAmazon やGoogleは勿論のこと、下図の通り、Azure等の様々なクラウドに対応しています。きっと、お客様が使用したいクラウドストレージも含まれていることでしょう。 <AltaVault 4.1> <CloudArray 6.0>
課題②:NetBackupからクラウドへのバックアップではバックアップデータの重複排除ができないため、クラウドストレージの使用量を削減できない。
解決②: AltaVaultやCloudArrayは重複排除機能があるため、クラウドストレージゲートウェイ上にバックアップした後、バックアップデータを重複排除し、ユニークなデータのみをクラウドストレージにデータを転送しますので、クラウドストレージへの転送量を抑えることができます。また、ストレージ容量を削減することにより、クラウドストレージのランニングコストも抑えることが可能です。重複排除処理もクラウドストレージゲートウェイ上で行われますので、バックアップサーバに負荷を掛けることもありません。
課題③:NetBackupがアクセラレーター機能で永久増分バックアップができるのは、ファイル・VMware・NDMPだけで、SQL ServerやOracle、Exchange等のアプリケーションやHyper-Vの仮想環境などのバックアップではアクセラレーター機能が使え
ないので、クラウドへのバックアップ時間を短縮できない。
解決③:クラウドストレージゲートウェイはオンプレミス環境にあるため、インターネット経由でクラウドストレージに直接バックアップする場合と比べて、短時間で確実にバックアップすることができます。また、バックアップ方法も従来のNASに対しての手法と変わりませんので、特定のアプリケーションのみがサポートということもありません。
課題④:バックアップはアクセラレーター機能の永久増分により転送量を少なくできても、リストアは対象データが丸ごと転送されるので復旧には時間がかかる。
解決④:リストアの際もオンプレのクラウドストレージゲートウェイからリストアするため、高速です。リストア対象のデータがクラウドストレージゲートウェイのキャシュ上にない場合でも、クラウドストレージから重複排除されたデータのみをクラウドストレージゲートウェイ転送するため、データ取得(リクエスト)にかかる料金も抑えることが可能です。
バックアップソフトの機能でクラウドストレージにバックアップする場合と比べて、クラウドストレージゲートウェイ製品の費用が追加で必要にはなりますが、重複排除によるクラウドストレージ容量の削減やリストア発生時のデータ転送量の削減によるランニングコストのメリットとバックアップ・リストアのパフォーマンス向上による運用のメリットを考えると、決して高くはないかもしれません。
まずは、クラウドストレージゲートウェイ製品をちょっと触ってみたいけど、環境を作るのが面倒という方は、下記のTest DriveでNetBackup7.7を使用してのAltaVaultへのバックアップを無料で試すことができます。
■Test Drive AltaVault backup to AWS S3 (日本語版利用ガイド)
このTest DriveのAltaVaultのCIFS設定では、Everyoneにアクセス許可が設定されていますが、実際の運用ではアクセス許可を設定するものと思います。その際には、NetBackupのサービスのアカウントをCIFSにアクセスできるユーザーに変更する必要がありますので、ご注意ください。
参考:Configuring credentials for CIFS and disk storage units
クラウドストレージゲートウェイを使用したクラウドバックアップ方法はNetBackupだけでなく、CIFS/NFSにバックアップが可能なバックアップソフトであれば、どのソフトでも技術的には適用可能です。お客様の環境や要件に合わせて、最適なクラウドバックアップ方法・製品を選択していただければ幸いです。
担当:臼井